自助・共助・公助とは 日本の災害経験から生まれた教訓

自然災害の多い日本で、いかにして被害を減らすのか。
防災・減災対策として10年近くにわたり、全国の議会で議論され、根付いた教訓が「自助・共助・公助」(互助を入れる自治体もあり)です。

自民党総裁選の菅義偉官房長官が「自助・共助・公助」という言葉を用い、今改めてこの言葉が注目され出しました。

自助共助公助とは?

気象庁および東京都より
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/1995_01_17_hyogonanbu/sympo0117_kobayashi.pdf

大地震が発生した瞬間、日本人は「火を消す、靴を履く、扉を開ける、柱の近くに逃げる」などなど、とっさの判断でその場の状況に合わせて自ら動くことが身についています。
また、緊急地震速報や緊急速報メールなど、国全体で大きく対策をしているものもあります。

災害発生時、いかにして身を守り、被害を最小限にし、生命と財産を守るのか。
これは、自分だけの力でも、家族と地域との協力だけでも、国や自治体の力だけでも実現できるものではありません。
時・場所・災害状況を適切にうまく組み合わせながら『一人一人&全体』で乗り越えていかなければならないのが、自然災害と闘う術だと、日本は経験してきました。

それが、
自助=自分の身は自分で守る
共助=家族や地域で助け合い支え合う
公助=国や自治体が助け守り復旧復興につとめる

という役割分担です。

自民党総裁選における菅義偉官房長官のリーフレット

これは今や、世界全体で共有されつつある災害対策となっています。
プラスアーツさんの『自信ITSUMO』
http://plus-arts.net/project/jisjin-itsumo/

私自身、学生時代にイスタンブルで経験した1999年の大地震では、この3つの姿勢と「防災教育」の重要性を強く感じました。

日本が多くの災害経験を通して培ってきた教訓

阪神・淡路大震災、そして東日本大震災と続くなかで、実際にいざ災害が発生した時に助け(公助)が来るまでの時間は現実的に72時間必要だ、と言われます。

72時間、約3日間、何千何万人と被害を受けている中では、どんな災害が起きても自力で、そして家族や近隣住民との協力で、生きながらえる必要があります。

電気、水道、ガスなどのインフラも、災害発生後復旧には時間がかかり、タイミングが異なります。

そのためには平時から、家族や学校や町会自治会など、いわゆる「地域」で「地域」の災害発生特性(南海トラフが来そう、津波が届きそう、木造密集地域だ、など)を理解しておくことがとても大切です。

それが東日本大震災後に全国展開された、地域防災マップの作成でした。
例:
板橋区地域別防災マップの作成
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/bousai/bousai/manual/1005639.html

あずまっぷ:板橋区道路冠水による浸水履歴図
http://azumao.maps.arcgis.com/home/webmap/viewer.html?webmap=2c27f43df94a487a8d67f964544029d8

2011年の東北地方の津波の経験を通しても、この地域防災マップの重要性は広まっており、全国の議会でとことん議論がされてきていると思います。

地域の学生たちによる防災マップづくり
板橋区高島平地域の高低差を調べると水害が推測できる(坂本作成)

今後発生しうる災害にどう立ち向かうか

いま、「自助・共助・公助」の概念は防災・減災の枠から越えて、地域包括ケアシステムの概念としても用いられています。
また、これに「互助」を加えることも多くなっています。
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kenko/kourei/care/1016142/1003416.html

言い方が難しいのですが、防災・減災は防災減災対策だけで達成できるものではありません。
今回の新型コロナ対策のような感染症も災害とみなすのであれば
・発生時(感染者)対策
・予防対策
・経済対策
・不安解消のための情報共有体制
・ひとりひとり・家庭・企業・自治体それぞれが
意識を高く保つ
など分野を越え、社会全体がつながりあい、支え合い、理解し合い、共に乗り越えるということが大切ではないでしょうか。

目の前の危機に対して

いままさにこの瞬間(令和2年9月6日正午)にも、九州地方には巨大な台風が向かってきています。

台風の進路を変えることは誰にも出来ません。
地震の発生を抑えることは誰にも出来ません。
しかし、災害に対して1人でも多くの命を救い、財産を守り、社会を持続させていくには、自らを守り、共に支え合い、公けに動く。
この時間と場所と役割を分担した共同作業が重要です。
『繋がり』とも言えると思います。

ぜひ、今回の総裁選でふたたび注目されているこの教訓を改めて認識し、見つめ直し、自然災害に立ち向かっていくきっかけにしていく時と思います。

ソナエヨツネニ